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1.李韜瑾(2012)「谷崎潤一郎の初期審美意識」『文教資料』 李韜瑾(2012)は本論においては、『刺青』の時代の設定を提出した。
『刺青』は明治30年(1910)に『新思潮』に発表された。
冒頭で「其れはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しい軋み合わない時分であった。
」と書いている。
これの「今」は谷崎潤一郎が小説を書いた時である。
即ち、明治末期ということである。
江戸時代においては、都会の繁栄と商業の発展と共に、町人文化がだんだん展開され、主流となっていた。
小説のテーマの刺青は流行的な町人文化の一つである。
その上に、小説に描かれている「浮世絵」、「草双紙」、「歌舞伎」なども江戸時代に流行っている文化形式であり、「饒舌を売るお茶坊主」、「幇間」という職業も江戸時代に流行っており、「豊国」「国貞」も江戸時代の風俗画画家であり、女羽織と、一通の手紙とを包む岩井杜若の似顔書の岩井杜若も江戸時代の有名な歌舞伎役者である。
従って、上記の江戸要素から見れば、『刺青』の背景は「愚かな」江戸時代に違いない。
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