有対自他動詞の可能表現の使い分けについて
-教育の立場から-
要旨:日本語学習者にとって、自動詞と他動詞の使い分けは難点の一つである。初学者はもとより、上級学習者すら誤用する場合も多い。そのうち、特に有対自動詞の可能表現に関する誤用が常に見られる。本稿は自他動詞の可能表現を中心に、無標識可能の成立条件を分析し、有対自他動詞の可能表現の使い分けを検討してみる。さらに有対自他動詞の可能表現の使用の実態調査を通して、中国語を母語とする日本語学習者の習得状況を究明したい。
キーワード:有対自動詞;有対他動詞;可能表現; 無標識
一、文献综述
日本語における動詞は自動詞と他動詞に大別されている。そのうち、「上がる」「上げる」のような自動詞と他動詞とが対応していると認められている。このような自他動詞のことをそれぞれ「有対自動詞」と「有対他動詞」と呼ばれている。自動詞と他動詞が対応するとみなす基準をめぐる研究が多くの学者によって様々な立場から行われてきた。早津(1987)は自動詞と他動詞との間に形態的・意味的・統語的な対応が成り立つ場合にのみ、両者の間に自他対応が成り立つとみなすことにすると述べている。その上、有対自動詞の主語の特徴とその現れの検討に基づき、有対自動詞を「働きかけによってひきおこしうる非情物の変化を、有情物の存在とは無関係に、その非情物を主語にして叙述する動詞である」と定義している。
可能表現とは、ある事柄の実現ができるか否かを問題にする表現である。渋谷(1993)は、可能表現を以下のように分類している。
(A)可能動詞
(B)動詞未然形+助動詞(レル)・ラレル
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